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Hikari Sakata

 

エストニア、と聞いてすぐに場所が思い浮かぶ人はどれくらいいるだろうか。わたし自身、エストニアがどこの大陸に位置していて、どれくらいの規模の国なのか、恥ずかしながら全くイメージできなかった。しかしその馴染みのなさと、エストニアと調べてトップに出てきた電子国家と、世界最大の湿地帯というキーワードには何か非常に惹かれるものがあった。数ある上智大学のスタディーツアーの中で最もイメージの湧かない、しかしながら最も私の好奇心を掻き立てた、エストニアスタディーツアーへの参加を迷わず決めた。
   フィンランドを経由(ムーミンショップで時間を使いすぎて空港内をダッシュ)して、エストニアに降り立った最初の印象は、美しい!ということ。歴史を感じさせる古い建築物は、色鮮やかで、必要なところには丁寧な修復が施されていた。街行く人はみなスタイリッシュ、かつファッショナブルで私の胸をより一層高鳴らせた。湿地を歩く機会もあったが、何キロも離れている地平線まで遮るものが何もなく、緑がただひたすら続く光景はとても美しく、自然の雄大さを感じた。
丸山先生の驚くべき人脈の広さのおかげで多くの小、中、高、養護学校を見るチャンスがあった。この学校訪問が、今回の旅の中で最も私に感動と衝撃を与えた。一番最初に訪れた小、中、高一貫校Tartu Kroonuaia Koolでは、案内してくれた学生が「ここではトイレが男女で分かれてないのよ」と説明してくれた。え?と一瞬言葉が出なかった。学校でトイレが男女別で分かれていない?もし日本でジェンダーレスのトイレを作るとしたら、あと何年かかるだろうか。そもそも認められるだろうか。私たちが大きな壁だと思っているジェンダーの差を、簡単に壊しているエストニア人のすごさを目の当たりにした瞬間だった。その後、同学校の4年生のクラスにお邪魔した。1人ひとりが自分のiPadを持ち、前のボードに貼られたQRコードを読み取るところから授業は始まる。私にとって現在履修している丸山先生の授業が、初めてQRコードを使った授業なのに…。子どもたちは、読み取ったQRコードを開き、楽しそうにアクティビティを始めた。これだけでも日本では見ない光景!と驚くのに、彼らはさらに私を驚かせた。私が英語で「今なにをやっているの?」と聞くと「自分の写真を撮って、そこに好きな言葉を英語で入力するんだよ!」と私よりも流暢な英語で答えてくれた。英語が上手すぎる…!私は驚いた。小学4年生が、日本の大学生の何十倍も上手な英語を話している。気になって、「英語以外の言葉も話せるの?」と聞くと、1人の子は「エストニア語と、英語と、ドイツ語を話すよ」と答えた。もう1人の子は「エストニア語と、ロシア語と、英語と、スペイン語を話す」と答えた。驚いた。エストニアはロシアの植民地を受けていたことや、子どもたちが見るアニメは英語かロシア語しかないという背景はあるにしても、小学生にして4カ国語を話すとは…。日本との差を大きく感じた学校訪問であった。
   実はこのツアー、エストニアだけでは終わらなかった。ドイツで開催された、Baltic Sea Project (BSP)へ参加するチャンスも頂いたのだ。(バスに合計30時間揺られながら移動した地獄のエピソードはさておき)本来、バルト海近隣諸国しか参加できないこのプロジェクトに日本チームが参加できたことは非常に幸運なことであった。ここでは各セクションに分かれて話し合いを行うのだが、各国の大人に混ざって自分の意見を言うというのは貴重な体験であった。自分のグループ内にとどまらず、3日間で多くの友人ができた。帰国してからも連絡を取り合い、近いうちにもう1度会おうと約束する仲間に出会えたことが、BSPに参加した1番の喜びであった。
   このツアーは、わたし自身の教育への関心をより強く、明確にしてくれた。日本とは少し違う教育スタイルが展開されているエストニアはとても興味深く、魅力的だった。また必ず戻ってきたいと強く思わせてくれたエストニアに感謝を伝えたい。次は必ずクリスマスシーズンに行くぞ!

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